★ 見習い神さまは メスギツネ (1/3)
(かみね登場)






ある公園の 片隅に、

静かで さわやかな林が
広がっております。








その林の中に、

古くて小さな社 (やしろ) が1つ、
ぽっつり と建っておりました。



近くを通っても 気づかずに、
通りすぎてしまう人も多い、
そんな社の敷地の中…

正確には、社の屋根の上 から、

なにやらポソポソと 話し声…



おじいさん孫娘 の会話
のようにも聞こえるのですが、

不思議なことに、

なぜか 2人の姿が
見えないのです。







では、頼んだぞ? かみね


お前にも、きっと
良い経験になると思うでな…?




まっ、まかせてください、師匠!

かみね、必ずや、

師匠の ご指導に報いますっ






声のするほうに
よくよく目をこらしてみると…



あ! 見えます 見えます。



透明な なにかが 動くたびに、

その表面が、
風にゆれる水面のように、

チラリチラリと
光っているのが分かります。




あれは… 犬? 

いやいや、
あの大きなシッポは
キツネ のようですね。




お稲荷さんに宿る
「神さま」 のような、
キツネの おじいさん と、

その弟子である
若いメスギツネの
かみね が、

なにやら、お仕事の話を
しているようです。


  




かみね は、

自分より少し高い位置に浮いている
おじいさんギツネ の前に正座して、

自分に与えられる指示や任務に、
真剣に耳を傾けております。






でもでも 師匠!

かみね、感激です!

ついに あたしにも、初仕事が…





言っているそばから
早くも涙ぐんでいる かみね に、

年老いたキツネは、
「これこれ」 と いさめるように、

その前足で 彼女の頭を
なでるのでした。





あの ネック という白猫は、
口は悪いが、いろいろと
シッカリ考えておる。


ミューラー の勤勉ぶりは、
一緒について学んだお前が、
誰より一番よく知っておろう…


あの ふき という青年も、
やがて必ず、「あの日」 のことを
思い出すはずじゃ…


お前が、シッカリと
その手助けをしてやるのじゃぞ。





師匠に頭をなでられながら、

かみね
何度も袖で顔をぬぐい…



やがてシッカリと
その前足をにぎり返して、

頭上の師匠に誓うのでした。




はい!

かみね

立派に師匠の代わりを
務めてまいりますっ






キツネのおじいさんは、
満足そうに うなずき、


そして、思い出したように
たずねました。




そういえば、
ふき の住居の場所は、
もう 正確に憶えられたかの?


先日、すでに一度
たずねてみたとは
言っておったが…





はい。 ふきさん の住む街は、

ものすごく たくさんの
人間たちの お家があって、

迷いやすかったのですが…





かみね、ちゃんと

『ナビゲーター用のアプリ』
をともなって
訪問しておりますから、

御心配には及びませんっ





かみね は そう言うや いなや、

袖の中に入れていた
「スマートフォン」
を取り出し、

師匠を仰ぎ見ながら、
うれしそうに使い方の
説明をはじめるのでした。






( 並外れた 「神通力」 を
持っておるのじゃから、

自分の能力で調べたほうが
早いと思うのじゃが…


こういうミーハーなところが、
どうにも 理解に苦しむ子じゃわい… )





キツネのおじいさんの
困り顔にも気づかず、

かみね
スマホ談議は続きます…




2月も まだ下旬ですが、

晴れた公園に流れる風は、
ゆるく、おだやかでした。










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