■ 「健康」 は、しあわせ の基礎






結局、ふき の語ってきた
しあわせ の数々は、

ネックミューラー
ほとんど完膚なきまでに
否定されてしまったことになります。







もちろん、
ネックミューラー は、

「否定」 だけが目的では
決してなかったのでしょうが、


ふき にとっては、
今まで確固たる自信を持っていた
『完璧なしあわせ』 たち
「穴」

これだけ大量に
指摘されてしまったわけで…


そのショックは
相当に大きなものでした。







そんな ふき が、力なく、
長ーい ため息を
はいていたところ、

ネック が こんなことを
言い出しました。




ふき

これであんたの言ってた
「しあわせ」 は、全部だっけ?





…そうですよ? ネックさん。


まさか ここまで
コテンパンにされるとは、

思ってませんでしたけど…





そうだっけ?

あんた1つ、

前に自分が語ってた
「しあわせ」 を、
言い忘れてると思うけど?




ふき が、怪訝な顔をして、
ネック を見つめました。






健康 だよ、

「け・ん・こ・う」。




ミューラー が、「ほぉ」 と、
興味深そうな顔をしました。





たしかに 「健康を保つこと」 は、

生きる上において、
かなり重要大切な要素ですよね。


仕事などをして お金を稼ぐにも、

他の人たちとスムーズに
お付き合いするためも、

そして自分の夢の実現に向かって
前に進むためにも、

1にも2にも、
『健康であるかどうか』 が、
大きく かかわってきます。





ふき も、

似たようなこと
言ってたよね〜




ネック
そんなふうに言われて、

ふき は ちょっと照れて、
頭をかきました。









ミューラー は、
深く うなずきながら、
こう続けました。



かくいう
私たち動物にとっても、

健康であるかどうかは
大変に重要
です。


人間さんたちと違って、
「蓄え」 というものを
ほとんど持てない我々は、

ケガや病気が、
そのまま 『死』 に
直結してしまう
ことが

本当に多いからです…






ふき にとって この話は、
ちょっとした驚きがありました。







というのも、ふき自身、

公園で1日中 気楽に
散歩や昼寝をしている
ノラ猫たちや、

その翼で ゆうゆうと
大空をかける
鳥たちの生きざまを、

「うらやましい…」
と思ったことが、
一度や二度ではなかったからです。




でも、人間の目には
気楽で自由に見える
動物たちの生活も、

実のところは、

ちょっと健康を害しただけで、
アッというまに 「蓄え」 が尽きたり、
ケガが治らなかったりして、
あっけなく 死に至る…



そんな、

ある意味 「死」 が
珍しくもなんともない
日々なのです。




薬 や 医療機関 に
囲まれた社会で生きてきた、

「人間」 である ふき には、

ちょっと想像のできない
過酷な世界 と言えそうです。











ま、だからって、

健康が 『しあわせの全て』
ってわけでもないけどね〜


特に 「人間」 は、ね。





そうですね。

たしかに、「健康」 であれば、

いろんなことに
チャレンジできますし、

長生きも できるでしょう…


でも、それは あくまで
「人生の状態の1つ」 であって、

『人生の本目的』 ではありません。





どんなに健康を維持しても、
ただそれだけに固執していては、

なにもせずに年齢だけを重ねて、
やがて寿命をむかえるのみ
です。


そのような人生で、

本当に 『生きた』 と
言えるのでしょうか?







そんな 無意味な 「人生」 だけは、

あたしは 御免したいねぇ…



ネック が、

やけに しみじみと
つぶやいた後…




まあ…

かくいう あたしは
「猫」 なんだけどね。



と、自ら茶化すように、
そんな下手な冗談を言いました。




ミューラー が おだやかに笑い、

ふき も つられて苦笑します。


  





ふき にとって、
ここしばらく、
重く つらい話が続きましたが、


そんな今までの緊張感が、
少し緩んだような気もしました。





2月の午後は
まだまだ厳しい寒さですが、

その日、ふき の家のリビングには、

やさしい太陽な光が、

ゆるやかに
そそいでおりました。









まとめ的 なことは
ミューラー が途中で
言っちゃったから、

あたしからは 特に
言うこた無いわね。



でも、当たり前のようで
ある日 突然なくなっちゃう
のが

「健康」 だったり、
「命」 だったりするんだよねぇ…


ま、あたしみたいな
ピチピチの若いメス猫
言うことじゃないかも
しれませんけど〜?








[目次 に戻る]