「仕事」 は、本当に社会貢献? (1/6)






ここまで、

自分が信じてきた 「しあわせ」 について
次々と その勘違いを指摘

されてきた ふき でしたが…






今日という今日は、
絶対の自信をもって
ネック との討論に のぞむ
ことが
できる気がしていました。




なにしろ、今日のテーマは 『仕事』


「仕事」 は、人間が社会に直接かかわる
重大な行為
であり、

これを否定することは、
人間社会そのもの を
否定するも同じです。




『戦わずして 勝ったわ』




ふき はホクホク顔で、
ネック との討論をスタートさせました。







…というわけで、

「仕事」 のすばらしさを
否定することは

人間社会そのものを
否定することなんですよ、ネックさん。

お分かりですか〜?





話し終わった ふき
会心のニタニタ顔を見つめながら、

ネックミューラー
顔を合わせて 「うんうん」 と
うなずいています。




なるほどねぇ、
よく分かったわ、ふき

仕事をするのって、
人間にとって
すごい しあわせなんだね。



こともなげに 同意する ネック





本当に おっしゃられる通りだと思います。

それぞれが個別に生きて、
大きな集団行動を取ることも
ほとんどできない
われわれ動物からすると、

人間さんたちの社会や、
それに参加する 「仕事」 という手段
には、

驚きと尊敬を感じずには おれません!



興奮気味に
人間社会をたたえる ミューラー




ふき の脳裏に、
天使の鐘が鳴り響きました。








ところが…



つまり ふき は、
死ぬまで働き続けたいわけね?



え!?





ネック の意外すぎる質問に、
ふき の脳内の鐘の音が停止しました。






先日、貯金のお話をしたときに、ふきくんは

「人間は、生活するための資金を稼ぐには、
ほぼ一生 働き続けなければならない」

と おっしゃっておいででしたよね?


私は てっきり、
それは 「不幸なこと」 なのだと
単純に思っていたのですが…




むしろ 人間さんたちは
一生 働き続けることを
「幸福」 と お感じだったのですね。



人間さんたちの自己犠牲のすばらしさは、
とても私のような 鳥ふぜいには
理解できない領域のものだと
感嘆いたしました!




先ほどに輪をかけて興奮し、
人間万歳 をとなえる ミューラー に、

ふき は 戸惑うばかりです。





あ、いえいえいえ…

できれば定年後は、
仕事なんかせずに
ゆっくり過ごしたいですよ?



…出来ることなら、
今すぐにでも…





そんな ふき の言葉に、

興奮していた ミューラー が、
キョトン顔になりました。





…え?

な、なぜなのでしょう??

仕事をすることが、
イコール 社会とつながることであるなら、

そこから離れてしまったら、
それはもう 「社会人」 とは
言えない
わけですよね?





しかも、私の聞き違いでしょうか…?


ふきくん 今、

「出来ることなら、今すぐ
仕事を辞めたい」
と…





急速に冷めていく ミューラー に、
ふき は、大あわてで弁明します。




あ、いやいやいや!

僕も別に
「仕事なんかくだらない、やりたくない」
とは思っていないんですよ?


でも、さすがに一生はキツすぎだし…



そりゃ、そうよね。

死ぬまで 生きるために働き続けて、
働かなくなった途端に死んじゃうんじゃ、

あたしら動物と いっしょだわw



ネック が自嘲ぎみに
そんなことを言いました。





だけど、ウッカリ
本音が出ちゃったね〜、ふき

「仕事は社会貢献!」 とか
イバってたくせに、

『やらなくていいなら やりたくない』

て、どういう事よ?




わ、私もサッパリ 意味が分かりません…




この 矛盾、どう説明してくれるのよ?

ほれほれほれ。







ネック の執拗な追求と、
ミューラー の戸惑い顔に押されて、

ついに ふき は観念し、
2匹に白状しました。







実は自分は、今の会社には、
本当は 企画者として入社していた こと…


しかし、実力不足で企画職からは はずされ、
今ではユーザーサポート業務に
回されてしまっている
こと…


なんとか再勉強して
企画者としてやっていきたいのだけれど、
毎日の仕事に振り回されて、
それもほとんど進んでおらず

ただ気ばかりがアセる日々を
過ごしていること…






そうした事実を1つ1つ、
2匹に語っているうちに、

今の自分の 不幸ぶり
シミジミと再確認されてきて、


『仕事に就けている自分は幸せ!』
確信していた当初の勢いが、

シオシオ〜… と、ふき の中で
しぼんでいってしまうのでした…











そうだったのですか…

ふきくん も大変だったのですね。


やりたくもない仕事を、
生活のためにムリヤリ…

下手したら一生、
続けなければならないとは…




ミューラー は しみじみと、
人間社会の難しさを
かみしめているようでしたが…


フッと顔を上げて、

ちょっと 照れくさそうに、
こんなことを言うのでした。





ただ、鳥の私が言うのもなんですが、

私も父親として、
子供たちが巣立てるようになるまで、
毎日のように 子供たちの分まで
食べ物探しに奔走した経験がありました…


今の生活を維持するために、
好きでない仕事であったとしても
働き続けることも、

ある意味 尊い行為…


と 言ってしまっては、
これは我田引水でしょうか?






もし 神さまというものが
実在するとしたら、

きっと今の ミューラーさん のような
御心(みこころ) の持ち主に違いない…
と、

ふき は しみじみと思うのでした。










前々から 怪しい怪しいとは
にらんでたけど、
ようやくゲロったわね、
この ウソツキ野郎

「俺さま 幸せ」 が 聞いてあきれるわ。






もし 神さまというものが
実在するとしたら、

きっと今の ネックさん を
僕がグーで殴っても お許しくださる…
と、

ふき は しみじみと思うのでした。











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