★ トンビが街にやってきた (1/4)
(ミューラー登場)







あの… 失礼します。



ふきくん のお住まいは、

こちらになりますでしょうか?





ふき のマンションの玄関に、

そんな、品を感じさせる
男性の声が響いたのは、


白猫 ネック との話が、
意外な方向に転がりだした
矢先でした。






ふき は正直、

予想もしていなかった
ネック の深刻な反応に、

うっすらと怖さのようなものを
感じていたので…


  



この声にグッドタイミングで
救われた
ような気がして、

すぐさま 玄関へと
走ったのでした。










ところが…


玄関のドアを開ける前に、
ドアのスコープで
外を覗いてみた ふき は、

「ん??」 と、怪訝な声をあげて、
動きを止めてしまいました。



レンズの向こうの景色に、

誰の姿も映ってなかった

からです。







おかしいな…?

待ちくたびれて
帰っちゃったのか?


結構 すぐ来たつもりなんだけど…






首をかしげながら、
カチャンとドアを開け、

左右にのびる通路を見渡しましたが…


やっぱり、誰の姿もありません。









そのとき、

先ほどの声 が もう一度、

ふき の耳に届きました。



ここです、ここです。

ふきくん。






ふき が、声のした方向、

つまり、足元 に視線を落とすと…





大きな茶色い鳥 が、

りりしい瞳で、
ふき を見上げておりました。











その鳥の頭の位置は、
ふき のヒザよりも さらに高いほどで、

身長(?)60センチ以上は
ゆうにありそうです。



もし、たたんでいる羽根を
いっぱいに広げれば、

軽く左右に 1.5メートルは
あるのではないでしょうか?





しかも、その鳥は、

袖をはずした
白いカッターシャツを、

まるでベストか何かのように
おしゃれに羽織っている


ではありませんか。









しばらく、ぼんやりと
その鳥を見つめていた ふき は…


突然、目をいっぱいに見開き、
金切り声を上げました。







わわわ

ワシ だーーー!








絶叫して、

その場にみっともなく
引っくり返ってしまった
ふき でしたが…





それを見て、
少しあわてた その鳥は、

こんな 自己紹介
始めたのでした。






あ、いえいえ。
ワシではありません。

トンビ です、私。



ふきくん とは、

以前に海辺で
お会いしたことがあります。



もう 1年ほども
前のことですから、

憶えておいででは
ないかもしれませんが…









「トンビが、人の言葉を話す」
というのは、

ありえない異常事態
なのですが、



ふき は すでに、

「しゃべる猫 ネック」
1ヶ月ほど暮らしている
実績(?)もあったためか、

そのあたりは意外とスンナリ
受け入れてしまったようで…





そ、そうなんすか…


いやオレ、

鳥の種類って
よく分かんなくて…




と、腰を抜かしつつも
トンビに勘違いを詫びたのでした。







そして、

こちらを見上げて
ニコニコしているトンビを、

マジマジと
見つめているうちに…





ふっと、ふき の脳裏に、

ある光景
よみがえったのです。








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